長く厳しかった猛暑の記憶も薄らぎ、長雨の寒さに毛布を引っ張り出すようになりました。まだ「秋だなぁ」と言い切れるほどではないですが、着実に季節は変わっていますね。
そんな秋に唐突に私の家で「西武4000系まつり」が開催されております。仕掛け人は狭い範囲の人々の心のヒダを巧みに突いてくるマイクロエースです。
↑まつりその1「MICRO ACE A-7394 西武4000系「52席の至福」4両セット」。マイクロエースしか商品化しないであろう、レストランカーに改造された4000系です。
↑まつりその2「MICRO ACE A-7395 西武4000系 ベンチレータ撤去 SIV 4両セット」。マイクロエースしか命名しないであろう、無味乾燥なネーミングの4000系です。まぁ、どの状態がプロトタイプかわかりやすいからいいのか。
↑西武線ですし、実は持っていない4000系ですしね。二つとも予約して買いました。そう、4000系持ってなかったんですよ…。私は幼稚園の頃から鉄道模型を嗜んでいますが、趣味から遠ざかっている時期が二度ほどあったりします。人生の半分くらいは遠ざかってたんじゃないかな?マイクロエースから4000系モデルが発売されたのが、そんな私の趣味の断絶期にあたっていたんですね。一番欲しかったのは、やはり慣れ親しんだ「登場時8両編成」ですね。再販してくれないかなぁ…
ともかく、ようやくの4000系、しかも二つ同時に手に入れたんですから、並べて眺めて走らせてみようと思います。
「至福」の実車は池袋駅の7番線に停車しているのを5番線の急行の車窓から一度眺めたことがあるだけ。普通の4000系に最後に乗ったのはいつでしょう?15年くらい前に秩父線で乗ったかな?8両編成の快速急行に乗ったのはもう20年くらい前になるでしょうか。生きてるなぁ(笑)
ともかく、実車に詳しいわけではないので、いつも通り「大体」で。
↑まずはお顔から。手すりが金属製の別パーツになっているのが目をひきます。「至福」編成はスカートが金色なのが目立ちます。「SIV」編成のほうもライトリムが銀色に塗ってあったりして芸が細かいです。
↑ヘッド&テールライトの点灯状態。ヘッドライトは電球色に、前面行先表示は白色に光ります。光量も申し分ないです。
↑飯能方のトイレ付クハ。屋根上は同じですが、ボディは作り分けられています。「至福」のトイレ窓が塞がれていますね。実車のトイレが大型の多目的トイレと男性用トイレにリニューアルされているのに合わせたようです。芸が細かい!
↑「至福」の1号車クハ4009「52春ハート」と「SIV」編成の飯能方クハ4013です。床下機器は共通のようです。
「至福」は4009編成を改造したもので、車番はそのままなものの各車に四季にちなんだ愛称がつけられています。4両編成だから四季はわかるとしても「ハート」って…要素多くない?と思いましたが、編成の定員52名と52枚のトランプをかけてデザインされたロゴマークがトランプの柄になっていますので、そこからのようです。外観からはわかりませんが、乗務員室側の乗降扉は閉鎖されていて、模型もドアスイッチが車体色で塗り潰されています。
「SIV」は4013編成をプロトタイプとしていて、商品名にもあるとおりベンチレータが撤去されて屋根上がスッキリしています。塗色は白地に青・赤・緑のライオンズカラー。西武ライオンズの球団歌、松崎しげるさんの『地平を駆ける獅子を見た』の2番で「空青く 風白く 地は緑 炎の色の獅子を見た」と歌いこまれているあの組み合わせです。ライオンズカラーの車両はこの4000系と山口線のレイライナー8500系だけだったりします。
↑「至福」も「SIV」も床下機器の一部に色さしがしてあって心をくすぐられますね。
↑「至福」のデザインは内外装とも国立競技場を手がけた隈研吾建築都市設計事務所が担当。1号車は春らしく羊山公園の芝桜と長瀞の桜がメイン。躍動的な金色の波は川の流れらしく、魚が泳いでいたり鳥が飛んでいたりと、模型で見てもとても綺麗で楽しいです。っていうか、すごいですよ!この印刷!段差にもちゃんと色がまわっています。ロゴマークも、号車表示も、車いすマークも、ドアスイッチもとても緻密ですね。ちなみに、車端のすみにちっちゃく「4009」と車番標記がありますね。
↑「至福」の妻面。実車は全体を淡いゴールドにした後に水色を基調としたラッピングが施されているようで、模型でも妻面にゴールド部分があります。貫通扉はシルバーに塗られていますので、金さん銀さんでとてもおめでたい感じです。
↑ボディをはずした状態。手前が「至福」で奥が「SIV」です。
「至福」1号車は座席が取り払われた多目的スペースになっていてスッカラカンです。座席パーツはベージュっぽい色で成形されています。
「SIV」の座席パーツは青色です。実車のシートも青ですからね。通学で池袋線を利用していた時、土曜日の試験帰りに4000系の快速急行に乗ることがありましたが、ボックスシートを占領して足を投げ出して眺める車窓はいつもと違って旅情に満ちて見えたものです。練馬高野台駅が開業したとはいえ、高架化が進捗しないでそのほかの駅がみんなまだ地上にあった頃です。
↑ボディの内側です。「至福」はそもそも水色で成形されているんですね。「至福」の実車は天井もこだわってデザインされているようですが模型ではスルーです。まぁ、天井までこだわってるのはTOMIXのプログレッシブグレードくらいですからね。
↑その天井ですが、ちょっと雑さが目立ちますねぇ。これは3号車の天井で、クーラーとベンチレータがあるんですが、焼き潰しでついています。それも、もう少しで天井に穴が開くのでは?というぐらいの勢いで…うーん…なんか見た目も汚いし、作り手としての丁寧な姿勢が感じられません。まぁ、工場の人の話でしょうけど。そもそも設計として焼き潰す必要なんかあるんですかねぇ?昔のTOMIXモデルみたい…。安くないモデルですし、マイクロエースが「技術の集大成」を謳うならこういう所も手を抜かないでいただきたいものです。
↑はい、気を取り直してパンタ付きモハに参ります。屋根上は「至福」も「SIV」も全く同じです。ボディも窓の塗り潰し以外は同じかな?
↑「至福」の2号車モハ4109「52夏クローバー」と「SIV」のモハ4113です。
「至福」は定員26名のオープンダイニングの車両で、西武秩父方の車端は業務用スペース&荷物置きになっているため窓が塗り潰されています。反対側のドアは外観からはわかりませんが塞がれていて、テーブルと座席が設置されています。
「至福」がトレーラー車なのに対して「SIV」はモーター車になっています。床下機器は相変わらずのレリーフ状ですが、機器の組み合わせは「至福」と違いは無さそうです。
↑「至福」2号車のデザインは秩父の山の緑…らしいですが、どちらかと言うと国の特別天然記念物の長瀞の岩畳に見えます。金色の流れ、濃灰色の重々しい岩、青い魚と鳥、松の緑…どちらにせよとても綺麗ですね(о´∀`о)
↑「至福」はウリの一つとしてテーブルランプが点灯します。電球色でとても良い雰囲気ですね。これは室内灯を仕込みたくねりますねぇ。
↑ボディをはずした状態。手前が「至福」で奥が「SIV」です。
「至福」の座席パーツは紫色でテーブル天板は茶色にぬりわけられています。テーブルランプと相まって窓の外からも目立ち、効果高いです。しかし、室内を不自然に遮る室内灯ユニット支え用の仕切りが邪魔ですねぇ。マイクロエースの仕様なので仕方ないですが、室内灯を仕込んだ時に目立ちそうです。
↑「至福」は車端の業務スペースと荷物置きにかかっているカーテンのひだもモールドで再現されています。色さしすると目立って面白いかも。
↑もう一方の車端の「ギャラリーコーナー」のカウンターも再現されています。ここ、何するスペースなんですかね?と思ってGoogleの車内ストリートビューを見てこの先にトイレがあることに気づきました。トイレ待ちのスペースですね!実車デザイナーの密やかな心遣い、感服しましたm(_ _)m
↑お次はパンタなしモハ。「至福」では1つだけ残されたベンチレータがきちんと再現されています。ボディは同じっぽいです。
↑「至福」の3号車モハ4110「52秋ダイヤ」と「SIV」のモハ4114です。
「至福」はこの3号車がモーター車になっています。マイクロエースだけじゃないですけど、電車編成におけるモーター車は「SIV」のようにパンタ付きモハに設定されることが多いと思いますが、「至福」の2号車はさっき見たようにダイニングカーでテーブルライトを点灯させるのが「ウリ」ですからトレーラーにしたんでしょうね。この3号車はキッチンカーで片側の窓はほぼ塗り潰されているので、再現もそこそこで大丈夫ですし点灯させる必要もありません。
「SIV」はトレーラーです。SIVつまり静止型インバータはこのパンタなしモハにぶら下がっています。写真で見える一番デカい機器ですね。このモデルは商品名どおりベンチレータが撤去され、補助電源装置が電動発電機(MG)から静止型インバータ(SIV)に交換されているのが「ウリ」ですから、モーター車にしてレリーフ状にするわけにはいかなかったのでしょう。「至福」と同時期に製品化してるわけですし、モーター車の設定は統一した方が当然効率は良さそうですから、コレはマイクロエースのこだわりなんでしょうね。
こだわりといえば「至福」はキッチンカーで水タンクなどの機器を増設する必要から電動コンプレッサーを4号車に移設しているそうですが、模型でも再現されているっぽいですよ。電動コンプレッサーは「SIV」の床下で銀色に塗られているやつですね。
↑「至福」3号車のデザインは秩父連山の紅葉です。赤、黄、橙に色づく山と紅葉が綺麗ですねぇ。武甲山も見えます。石灰岩の採掘で削られまくっている様子まできちんとデザインされています(笑)名山と聞かされていたので、実物を初めて見た時はその山容に衝撃を受けたものです。何かこう「しちゃいけないことをしている」というか「山の神様に怒られそう」とかそんな感じ。あくまで個人の感想ですm(_ _)m
↑ボディをはずした状態。手前が「至福」で奥が「SIV」です。「至福」の座席パーツはベージュ系ですが1号車より明るく濃い感じ。
↑「至福」はキッチン周りとか手洗いシンクとかドリンクサーバーとかも再現されています。気合は入ってるんですが…
↑モーターが収まりきってなくてせっかくのパーツが歪んでいます。こういうのを見るとやっぱりマイクロエースだなぁ…と思います。
↑西武秩父方のトイレ無しクハ。屋根もボディも同じようです。
↑「至福」の4号車モハ4010「52冬スペード」と「SIV」のモハ4014です。
「至福」は3号車から電動コンプレッサーが移設されてりしていますので、「SIV」とは床下機器の組み合わせが違うのが再現されています。私は実車や機器に詳しくないのでこれが正確かはわかりませんが、マイクロエースは「タイプ」モデルで済ませないできちんとこだわっているっぽいです。
↑「至福」4号車のデザインは「あしがくぼの氷柱」です。ピンと来ないなぁと思ったら最近始まった冬のイベントで、沢の水を汲み上げてホースやスプリンクラーで斜面にまいて人工氷柱を作っているようです。夜はライトアップとかしてて綺麗そうなので一度見たい気もしますが、夜祭りですら凍え死にそうになる冬の秩父で、わざわざ氷に近づきたくない気もします。デザイン的には金色の川の流れが乗務員室付近で見事な氷柱に変化しています。雪も積もってまさに冬のデザイン。季節感出てるなぁ。
↑ボディをはずした状態。手前が「至福」で奥が「SIV」です。「至福」の座席パーツは2号車の青紫とは違ったピンクに近い赤紫です。そういうところはちゃんとこだわってます。
↑「至福」のテーブル天板は4号車もちゃんも塗り分けられています。
↑「至福」編成はマイクロエースが「これまで培った技術の集大成」を謳うだけあって、かなりのこだわりを持ってつくられています。特に塗装は間違いなくピカイチ!それだけに、天井の雑な焼き潰しや座席パーツの歪みがとても残念。ここらへんが丁寧に処理できていたら「マイクロエースのプログレッシブグレード」と呼べるものになっていたのでは?
↑品番的に一つ後の「SIV」ですが、「至福」のついでにつくったわけではなく、モーター車の設定や床下機器のつくり分けなんかはすごくこだわっています。西武線好きの人なら細かい作り分けにニヤリと満足できそう。まぁ、一般的にはあまり人気はでないでしょうね(笑)
それでは走行動画に参りましょう。
【走行模型】
MICRO ACE 西武4000系 A-7394「52席の至福」4両セット
【走行模型の私的五段階評価】
★…1ポイント ☆…0.5ポイント
※★3つが標準です。あくまで個人の感想です。
外観の細密さ★★★★★
走行の安定性★★★★★
走行の静粛性★★★★★
取扱いの容易さ★★★★
溢れ出る魅力★★★★★
総合評価:★★★★★
「至福」編成の特徴である車体デザインが模型でも見事に再現されています。テーブルランプの点灯化やダイニングテーブル天板の色さしも効果が高くニンマリできます。トイレ窓が塞がれたクハのボディもきちんと表現してあって好印象です。
走りも素晴らしく、低速もよく効いて、そして静かです。
取扱いは容易ですが、各所の工作にマイクロエースらしい雑さが残っていて、長期的には一抹の不安があるので星一つ減。
眺めて良し、走らせて良しと、満足度が高い魅力的なモデルです(^^)
【走行模型】
MICRO ACE 西武4000系 A-7395 ベンチレータ撤去 SIV 4両セット
【走行模型の私的五段階評価】
★…1ポイント ☆…0.5ポイント
※★3つが標準です。あくまで個人の感想です。
外観の細密さ★★★★★
走行の安定性★★★★★
走行の静粛性★★★★★
取扱いの容易さ★★★★
溢れ出る魅力★★★★★
総合評価:★★★★★
同時発売の「至福」編成とはちょっと違うボディや床下機器がきちんと表現されていて好印象です。
走りも素晴らしく、低速もよく効いて、そして静かです。
取扱いは容易ですが、各所の工作にマイクロエースらしい雑さが残っていて、長期的には一抹の不安があるので星一つ減。
既に発売されている同社の西武4000系セットを持っている人はなかなか食指が動かないでしょうが、西武線好きなら買って損は無い魅力的なモデルだと思います(^^)
今回も「大体」のところで楽しめました。