近所のホビーオフで面白い物を保護してきました。
プラモメーカーの童友社がアメリカBachman社の香港製Nゲージを輸入して1975年に販売した「ミニトレインセット」のジャンクです。 私が生まれるよりちょっと前の製品ですね。
童友社はこれより前に、単3電池とモーターを搭載した蒸気機関車や路面電車がプラ製9mm線路を走る「童友社の9mm鉄道列車セット」を販売していたようです。実物を見たことが無いのでネット情報からの想像ですが「Nゲージ同様の動力ユニットを単3電池一本で動かす小さなプラレール」といったもののようです。当然スピード調節は出来ないわけですね。
「9mm鉄道列車セット」の限界を感じた童友社が本格的Nゲージに参入しようとして販売したのがこの「ミニトレインセット」なのでしょう。
参考までにトミーの歴史を振り返ると、1970年ごろから同じくBachman社の香港製Nゲージを輸入販売し、1974年には香港製国内型モデル1号のED75を発売(トミーナインスケール)、1976年に自社製Nゲージブランド「TOMIX」を立ち上げています。
童友社も周回遅れ気味ながらこの流れに追随しようとしたのでしょうか。ちなみに、ミニトレインセットのシリーズとして新幹線や特急のセットも計画されていたようですが、発売には至らなかったようです。このミニトレインセットが「童友社唯一のNゲージ製品」ということになりますね。夢の跡のようでなんだか切なくなってきました。
さて、このミニトレインセットは車両、線路、コントローラーが揃った「ビギナーからマニア迄満足できる本格派鉄道模型」のトータルセットです。謳い文句は「安全で簡単なバッテリーパワー。スピード調節ができる」です。童友社は電池にこだわりますね笑。「9mm鉄道列車セット」ではできなかったスピード調節が大きなウリとなっています。
前置きが長くなりましたが、どんな製品なのか見ていきましょう。
フタを開けるとこんな感じ
セット構成は
○Bテンダー機関車
○有蓋車
○緩急車
○カーブ線路8本
○直線線路2本(内1本はフィーダー線路)
○フィーダー線
そしてなんと、ケースがコントローラーを兼ねています。
ケースのこの部分に単二電池を5本セットするのですが、私が入手した品は電池の接点金具が失われています。一部が溶けたり切り取られたりしてますし、何か前オーナーが改造しようとした気配がありますねぇ。
コントロールダイヤルとフィーダー線の差込口。スピード調節はこのダイヤルで行います。
ダイアルに仕込まれた接点が巻線の抵抗器の上を移動します。接点がこの位置にあると停止。
この位置で低速。
この位置で高速です。
次に車両を見ていきましょう。
B&O(ボルチモア アンド オハイオ)鉄道のC16Aクラス蒸気機関車…というらしいですね。
軸配置0-4-0の入換用Bテンダー機です。
ウィキペディアで見ると96〜99号の計4機がC16クラスとして製造されて、もともとはサドルタンク機関車だったようです。96号と99号の2機は後年テンダー付加、サドルタンク撤去の改造を受けてC16Aクラスになったと…へぇ〜。
床下には「BACHMAN HONG KONG」の刻印
傾斜のついたテンダーが印象的です。海上自衛隊初期の国産護衛艦のいわゆる「オランダ坂」を思い浮かべますね、私だけですね。
バックマンのオリジナルには手すりパーツがついているようですが、童友社のものには元から付いておらず取付穴だけがあります。後述する有蓋車の屋根の歩み板や、カブースの煙突も同じように省略されているようです。
塗装も全車省略されており、プラ成形色のままです。
価格を抑えるためなんでしょうけど、この辺に後が続かなかった理由と童友社の企業的体力の限界を窺うことができる気がします。
トミーもこれより前にこのバックマンのC16Aを輸入販売していたようですので、童友社が同じように塗装・パーツ取付済みのものをトミーより少なく輸入して販売したら後発な上に高くなってしまったことでしょう。
無塗装とパーツ取付省略で抵価格化を図ってビギナーさんにはお安くセットを、その弱点を逆手にとってマニアさんはお好きに改造を…とセールスしたのでしょう…う〜んちと苦しいなぁ(^^;
ところで、石炭の上にスコップがモールドされています。40年以上前の製品とは思えない細かな芸です。やるな、バックマン!
ちなみにこの機関車、何も手入れをしなくても普通に走りました。驚きです。
それでも一応構造把握と状態確認をしたいので軽くバラします。ボディは印のネジ一本でとまっています。
ボディを外すとこんな感じ。キャブに置かれたモーターの重みで下廻りが尻餅をつくので、ボディの印の部分にカウンターウェイトが仕込んであります。蒸気機関車は下手に車輪をバラすと地獄ですのでここまでで止めておきます。モーター周りも導電経路もギア周りも特に問題は無さそうなので、軽く車輪を磨くだけです。なかなか良い状態ですね。
有蓋車、詳細不明です。屋根の歩み板が省略されています。茶色のプラ成形色と相まって日本型といっても通用しそうですね。
そうか、機関車もこの有蓋車も後述の緩急車も、一応日本型を意識してプラの色を指定してたんですかね。童友社の苦しい中でのこだわりだったのかなぁ〜…と妄想するとちょっと感動できます。
緩急車、車掌さんの生活設備もととのったカブースですね。こちらも詳しい形式等は不明。煙突は省略されています。成形色は黒。
日本型を意識したとしても…カブースは無理があった気がします笑
無蓋車とかタンク車とか、もっとほかに選択肢があったような。「車掌がいなきゃ走らんじゃないか」というこだわり…ですかね。
さて、今回入手した品は電池ボックスが破損してますが、せっかくのトータルセットなのでなんとかオリジナルに近い組み合わせで走らせてみたいと思います。
線路を耐水ペーパーとレールクリーナーで磨いてつなげます。コンパクトなオーバル一周分ですが、経年変化でカーブが開いておりご覧のような隙間ができてしまいます。これを騙し騙しつないで輪にします。
単二電池5本の代わりにパワーパックをつなぎます。電圧は固定にしておいて、ケースについているダイヤルコントローラーで操作してみました。うまくいきましたよ(^^)
それでは、走行動画をどうぞ。
オリジナルの組み合わせで走らせた後は、車両のみいつものレイアウトで走らせました。
【走行模型】
童友社 バッテリーパワー ミニトレインセット(Bachman製 B&O class C16a 0-4-0 switcherほか)
【走行模型の私的五段階評価】
★…1ポイント ☆…0.5ポイント
※★3つが標準です。加減点をする場合は総評で理由に言及しています。あくまで個人の感想です。
外観の細密さ★★
走行の安定性★★★
走行の静粛性★★★
取扱の容易さ★★★★
溢れ出る魅力★★★★★
総合評価:★★★☆
塗装省略などと引き換えに低価格を実現した製品ですので外観の評価が低いのは仕方ありません。
構造がシンプルなので取り扱いは容易です。
日本のNゲージ黎明期の雰囲気を味わえる魅力的なセットですね!
今回も大体のところで楽しめました。